5月ゴールデンウィーク出発
どっぷりキナバル6日間参加 花岡 勉様
一日目
現地時間の午後4時、定刻より早くコタ・キナバル国際空港に関西空港からのマレーシア航空の直行便が到着した。平均年齢51歳の我々中高年登山隊の7名のキナバル登山が始まった。
コタ・キナバルはスコールの後の蒸し暑い夕暮れを迎えようとしていた。入国の手続きを済ませ6日間お世話になるガイドの「トンさん」とともに今日に宿泊地のキナバル公園へ約2時間の道のりをバスで向かう。
19時前に夕闇のキナバル公園に到着。
今日泊まる部屋は「ヒル・ロッジ」というコテージである、二人部屋でシャワー・トイレ付きのなかなか立派なコテージである、夕食は近くのレストランでマレーシア料理。欧米人と挨拶を交わす。
そうキナバル山は世界自然遺産に指定されていて世界中から登山者が来る。料理は大変美味しく満足の夕食だった。明日への意気込みを抑えつつ早めに休む。
二日目
朝6時。
鳥のさえずりで目を覚ます。
表に出てみると目の前に写真で何度も見たキナバル山が目に飛び込んできた、「ウォー、凄い。」多分ほとんどの人が口にすると思う、それくらい迫力のある雄姿だった。
今の天気は快晴。
早速荷造りに取り掛かる。荷物を下山地のマシラウ・リゾートへ運んでもらう物とポーターさんに持ってもらう物と自分で背負う物と3つに分ける。
7時に向かえの車が来て荷物と一緒にキナバル公園本部・パーク・ヘッドクォーター(通称PHQ)に向かう、朝食を済ませ登山許可証のIDをもらい、いよいよ登山の開始である。
登山の3日間のガイドをしてくれる「マリウスさん」と「プリモスさん」それにポーターの女性の方と昨日からの「トンさん」と総勢で11名の登山隊となった。
8時45分に登山ゲート(ティンポホンゲート1,890m)を出発。ゲートの脇に毎年やっている「キナバル登山マラソンの記録ボード」があった、1位
は往復で2時間40分。世の中には大変な人がいるものだと関心する。
最初は下りだ、5分ほどで「カールソン滝」に出る、湿った風が心地よい。これからは鬱蒼としたジャングルの中をひたすら登る。登山道にはところどころにポンドックと呼ばれる休憩所がある、そこには東屋風の休息所と水洗のトイレ・水道がある、水道は沢の水を引いたものでガイドさん達はごくごくと水を飲んでいたが日本人はやめたほうが良いとのことだ。
11時40分「ラヤン・ラヤン」の小屋へ到着。ここで昼食だ、昼食は朝食の時のレストランで作っていただいた物で、サンドウィッチと鳥のから揚げとゆで卵それにミネラルウォーターだ。空は厚い曇り空、ガスもかかりだし今にも雨は降ってきそうだ。しばらくしてやはり降り出した、結構な雨足だったのでカッパを着ようとしたが風がないので、傘で行くことにしたこの方が蒸れなくてすむ。
14時10分、小雨の中を今夜の宿泊地「ラバン・ラタ・レストハウス」(3,352m)に到着、先頭を歩いてくれたガイドのプリモスさんの安定したペースのおかげで一人の脱落者もなかった。小屋の中は大勢の色々な国の人で混雑をしている。
早々に部屋に入る、割り当てられた部屋にびっくり、7人で二段ベッドの4人部屋と温水シャワー・水洗トイレ付きのシングルベッドの4人部屋の二部屋だった、この山に来て白いシーツのベッドと温水シャワー・水洗トイレの付いた部屋に泊まれるとは夢にも思わなかった、しかもどの部屋にも暖房が付いている、我々は2泊だったので交代でリゾートの気分を味わうこととなった、後で知ったことだがこのレストハウスに泊まれない人は上にある小さな宿泊だけの小屋へ泊まることとなっているようだ。
夕方、西の空には綺麗な夕焼けが南シナ海とその周辺を黄金色の染めている、明日も午前中は天気が良いようだ。
食事を済ませ20時就寝。
三日目
午前1時。階下の厨房での食事の用意の音で目が覚める。今日はいよいよ登頂の日である。今日登頂してその足で下山をするパーティーは午前2時頃には出発をするらしい、われわれの下山は明日なので出発は一番最後の午前3時である。
2時半に軽食を摂る、入念な準備体操をして真っ暗な中をヘッドランプの明かりを頼りに最後に小屋を出発。早い人は「サヤッ・サヤッ小屋」付近を登っているようだ、闇の中を登っている人のかすかな声とヘッドランプの明かりが時々見えるだけの静寂の中、天空には見たことも無いような星空だ、月が出ていないのでその綺麗さは言葉に表せない、誰かが叫ぶ「南十字星だ!!」その南方へ向いた指の先には初めて見る「南十字星」があった。想像よりも大きくハッキリと見え感激の一言であった。
午前5時55分、朝焼けの中をキナバル山の最高峰「ロウズ・ピーク4,095m」に登頂する、天気は快晴、登ってくる朝陽とシルエットから本来の色を取り戻した山々が壮観な輝きを増し始めていた、西の南シナ海方面
を見るとキナバル山の影が、影鳥海ならぬ影キナバルとなって大地に映っている。爽快の一言である。今日下山するパーティーは名残惜しそうにしながらも下山を始めている。
午前7時、誰も居なくなった山頂を我々も後とする、ロウズ・ピーク、ビクトリア・ピーク、ドンキーイヤー・ピークに別 れを告げ、フリクションの効く花崗岩の大地をラバン・ラタに向けて歩く、誰もが笑顔で至福のひと時である。
8時50分、ラバン・ラタ・レストハウスに到着、ほとんどのパーティーが下山するので小屋は閑散としている、遅い朝食を摂り部屋に戻る。これから今日小屋へ宿泊するパーティーが到着する2時ころまでが、この小屋の一番静かな時間である。従業員の方も休んでいるらしく小屋は驚くほど静かである。
昼に階下へ降りてみると我々の昼食が用意されていた、どうやら明日マシラウへ下山するのは我々のパーティーだけらしい。昼過ぎ、ぞくぞくと雨の中を小屋に到着しはじめ、またいつもの活気の溢れる小屋へと変わっていった。小屋のすぐ下に広場がありそこにはネットが張ってあった、バドミントンでもやるのかと思っていたら、始まったのはなんと「セパタクロー」であった、ここはマレーシアなのだ。
四日目
午前4時半起床。今日はマシラウ・ルートの下山である。来た時のルートより2kmほど長くおまけにアップダウンのコースと聞かされているが下りなら苦にならない、登山者も少なく静かなルートのようだ。
午前6時作っていただいた朝食をザックに詰め準備体操を始める、6時丁度にガイドさんが来る、時間には大変正確である。天気は快晴。下山を開始する、2〜3分歩いては振り返る、また歩いては振り返る、キナバル山の象徴のドンキーイヤーピークが手を振っているようだ。
7時半、ラヤン・ラヤン小屋の付近からマシラウ・ルートに入る、朝食はもう少し先に景色の良いところがあるとのことでそこまで我慢する。マシラウ・ルートは馬の背のような広い稜線で大変眺めが良い、しばらく歩くとガイドさんが道の傍らを指差した、ウツボカズラである。しかも群生していて中には「あけび」のように木からぶら下がっているものもある、ビロード・ウツボという種類で木からぶら下がっているのは珍しいとのことだ。初めて見るウツボカズラに感嘆の声を上げる、花崗岩の岩山から確実に熱帯のジャングルに下りていることを実感する。
8時半、眺めが良い場所で朝食。ガイドさんが薦めるだけあって眺めは最高だ、間近でキナバル山を見ることのできる最後の場所らしい。
9時、名残尽きないキナバル山を見ながら下山を再開する、急な角度で下降を続ける一気に熱帯のジャングルとなった、ところどころ「ラン」のような花が大きな木に寄生するように咲いている、途中橋を3箇所ほど渡り11時にマシラウ・ネイチャー・リゾートへ到着した。いままでの暑くじめじめした登山道から一歩足を踏み込むとそこには茶色を基調とした、南国風の建物の並ぶリゾート地だった。マシラウ・ネイチャー・リゾートは大変落ち着いた雰囲気のリゾート地だ。
11時半昼食、自分の汗と泥に気を使いながらの綺麗なレストランでの食事は気がひけた。
12時半、今夜の宿泊場所のコテージへ移動、レストランからは数分の距離だ、コテージは二棟、一棟に3室6人が泊まれるようになっている、今夜は一人でツインルームを1部屋使う計算となる、登山口で預けた荷物も運ばれ早速部屋に入り熱いシャワーを浴びる。
登山の行程を5日間にするか6日間にするか迷ったが、山小屋で2泊マシラウ・コースを下山の6日間のゆとりのあるスケジュールのこのコースにして大変正解であった。そしておすすめである。
2時にウツボカズラのトレイルを散策、厳重な管理の元移植された数種類のウルボカズラ間近に見た、大きなものは数十センチ、小さなものは1センチにも満たないものまで多種多様である、虫と溶かす溶液の中に、ある種のぼうふらがここなら安全とばかりに住んでいる自然は偉大である。リゾートの敷地内にキナバル山周辺の動植物や山の写
真などが展示してある施設があり、たいへん興味深く見せていただいた。
五日目
午前6時起床。7時朝食。今日は1日観光である。
8時半に迎えの車が来る。車に揺られること1時間半、ポーリン温泉に到着した、最初にキャノピーウォークウェイと呼ばれる吊橋に行く、吊橋といっても川ではなく。樹高40メートルもあるメンガリスという樹と樹の間を結ぶ吊橋で一番高いところで41mとスリル満点の吊橋である。普通
では見られない樹の上の生態圏の観察に作られたようだ。
次に待望の温泉である、戦争中に日本軍が開発したものだそうだ、無料の露天風呂と有料の貸切個室風呂とがあり我々は1時間15リンギットの安い貸切風呂に入った、キャノピーウォークウェイでの汗と昨日までの心地よい気もする筋肉痛とを和らげるには最適の温泉だった。
次はラフレシアである、この花は言わずと知れた世界一の花なのだが、1週間しか咲いていないために見られる機会はそうはないようであるが、今回は昨日咲いた花があるそうなので見に行く事にした。
拝観料が一人30リンギットと高かったのだが一生ものと思い決心をした、歩くこと数分、じめじめとした薄暗いジャングルの中にラフレシアはあった、「凄い」!! 「大きい」!! 色は茶色のようなオレンジ色、花の大きさは端から端までで80センチくらい、中にとげのようなものはある、見るからに不気味で人をも飲み込むというような言い伝えが現実味を帯びてくる、なにか歩き出しそうな花である。
しかし、感激の一瞬でもあった。
12時半、ポーリン温泉を後にキナバル山山岳ガイドのドゥスン族が生活するキアウ村を訪れる、顔は日本人と良く似ている、最年長ポーターとして活躍しているバナティさんの家へお邪魔して昼食をご馳走になる、バナティさんのお宅ではお嫁さんが昼食を用意して待っていてくれた、主食は陸稲を樹の葉で蒸したもの、それに煮物や川魚の炒め物など5〜6点を車座になっていただく、味は日本の昔のお惣菜のようで美味しかった。そしてココナツ酒これも美味しかった。
15時半、バナティさん一家に別れを告げコタ・キナバルへと戻る。
5時半、ホテルにチィクイン後夕食と買い物に出る。夕食はウォーター・フロントにあるシーフード・レストランで魚三昧での祝杯となった。
六日目
午前0時50分、定刻通りにコタ・キナバル国際空港を離陸。
日本時間の午前6時20分、定刻より30分早く関西空港へ到着。
6日間とも天気に恵まれ、日程にゆとりがあり大変満足の最高の6日間でした。
ありがとうございました。
花岡 勉
”ゴールデンウイークのキナバル山感想文、No-2を読む”
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