メタボ予備軍 2007クライマソン完走!!
8月25日、うす曇。気高く空に突き上げる峰々が中年に差し掛かったランナーのチキンなハートをあざ笑っているかのようだ。 「そろそろ森林限界かな」というところで、でっかい岩壁や岩峰が姿を見せ始めた。レースに集中もしているつもりだけど、ウエストバッグからレンズ付フィルムを取り出す。 レースも大事だけど、この威容を記録に残さないのはもったいない。 風景に目を奪われながらも一歩一歩高度を稼ぐ。「村のアディダス」を履いた地元のお兄さんと抜きつ抜かれつ、ようやく6.5km地点のラバンラタ小屋だ。 高度3270m、富士山でいえば8合目、疲れも確実に増してきているが、まだ大丈夫だった。そして小屋の前では、大声援で盛り上がっているので、「私に?」と思いきや、私のすぐ後ろにいたアディダスの兄さんへの声援だった。 すっかり「おまけ状態」だったけど、私も無理矢理、手を振って声援にこたえた。 最後のシェルター、サヤサヤを過ぎしばらく行くとそこに現れたのは「カベ」。 「なんじゃこりゃ」と一瞬思ったけど、ロープを使って岩と岩の溝に足を引っ掛ければと大丈夫と、まだ冷静さは失っていなかった。 「カベ」を越えたらこれまで思い描き続けた岩盤地帯だ。ものすごく広く、思っていたほど急ではない。このぐらいなら走れるかなと思ったけど、すでに富士山頂ほどの標高。 「無理だな。やっぱり歩いて行こう」と止まって休まないことだけを考え進み続けた。もがき続けるうちにトップランナーが一人二人と、ものすごいスピードですれ違っていく。 そして、しばらくして我が「チームFUJISAN」(私の勝手なネーミング)の女子、神原選手も女子トップで下ってくる。あわててレンズ付フィルムのシャッターを切りながら「ナイスラン!!神原さん」と声をかける。それにしても軽快だ。 しかし私の登り続ける足は相変わらず重い。苦しくはないけど思うように動かない。でもドンキーイヤーピーク、サウスピーク、そしてこれからめざすローズピークに囲まれながら心の中は「私はクラマソンの真っ只中にいる!ハッピー!!」の一言。 ローズピークにいる人影が少しずつ大きくなってきた。いよいよ山頂だ。あと50m、40m、30m、しかし「あれぇ足場がみつからない。登れない」 もうそこなのにコースアウト? ちょっと右側に回り込み足場を見つけ、ようやく看板に「タッチ」兼記念撮影を済まし、いよいよ下りだ。 体は楽になっているはずなのに、思うように足のコントロールができない。トロトロ下っていると、地元の小柄な女性がピョンピョンと私を追い越していく。「どうぞ、お先に」とあっさりお見送りをした。 岩盤や例の「カベ」もロープを使い無事に下ったが、登りの時にはあまり感じなかった木の階段や河原のような足場の連続に、このレースの厳しさを改めて思い知らされた。もともと下りは得意ではなく「予想どおりかな」と。 ペースが落ちてくるといろいろなことを考える。「いや、そうじゃないんだ。とにかくメタボ予備軍の希望の星(?)をめざし完走するんだ」と気を取り直す。 マイペースながらも距離表示のカウントダウンは登りのペースより圧倒的に速く、気がつけば足場もだんだんよくなってきていた。 いよいよティンポホンゲートを過ぎアスファルト道、残り3kmだ。 ここはとにかく元気よく行きたいと飛ばし続け、「そろそろフィニッシュかな」と思ったところに、チームの要、木勢君が「日の丸」を持ってお出迎え、二人並んで歓喜のゴール。 「ありがとうキナバルのみなさん!」 「ありがとうキナバル山!!」 富士吉田市陸上競技協会 羽田和矢
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